退職したメンバーがコンスタントに戻ってくるフクロウラボ。同じ会社で二度目の営業職って、どうなの?
退職した会社で、もう一度働く。転職を考えるときそんな選択肢を持てたなら、それは幸せなことなのかもしれません。転職が当たり前になり魅力的な企業が溢れている現代に、新しい会社に挑戦する以上の期待感を匂わせるような、過去の実体験が存在する証拠なのだから。
フクロウラボはなぜか、退職したメンバーの再入社が多い会社。この3年間で5人のメンバーが再入社し、正社員数の約8%を占めています。出戻りで働くと、気まずかったり、新鮮味に欠けたりしないのでしょうか。この春、再入社してくれた営業部の佐藤 祐大(さとう・ゆうき)さんに聞いてみました。
自分で稼げる能力を培いたい
——佐藤さん、久しぶりのインタビューですね。まずは3年前に退職されてから、またフクロウラボで働くことになったあらましをお聞きしていきます。
海外の大学を卒業後、帰国して就職活動をしていた時にフクロウラボに出会いました。最初はインターンでお世話になりながら就職先を探していたんですが、この会社が好きでそのまま正社員になって。2年ほど働き、家庭の事情で地元の北陸に帰ることになり、退職しました。
——退職を決めたとき、社内の反応はどうでしたか?
退職して地元に帰ることを清水さんに相談したときは、「いちビジネスマンとしては東京にいる方がためになるかもしれない。個人的に辞めてほしくないしまだまだ一緒に働きたい。ただ、佐藤さんの決断や、やりたいことは尊重したい。」と。雇用主と従業員の関係性ではなく、社会人の先輩として僕のことを考えてはっきり言ってくれて、嬉しかったです。いつか地元に帰ろうと考えていたこともあり、結局は退職することを決断しました。
——退職後は、どのようなお仕事に就いたのでしょう。
創業100年以上の老舗の商社です。IT広告業を営むベンチャー企業のフクロウラボとは、真逆ですね。繊維材料の貿易を担当する部門に、営業職として転職しました。
——商社での3年を経て、フクロウラボに戻ってくるまでは、何があったのでしょう。
30歳になり子どもが生まれ、仕事もそれなりに安定してきました。そんな中コロナ禍で社会が大きく変わり、景気の先行きが不透明なことに危機感を覚えたのがきっかけです。このままでいいのかなと疑念と、自分で稼げる能力を培いたいという思いが強くなってきた時でした。新しいことに挑戦したいと考えていたところ、見ていたかのようなタイミングで清水さんが連絡をくれたんです。
その頃は、フリーランスとして独立する選択肢も考えていました。清水さんもフクロウラボを創業する前はフリーランスをされていたので、起業した当時のことを聞いてみたら、親身になってご自身の経験について教えてくれました。
——その時の会話が、再入社のきっかけに?
働き方を変え、会社という看板がなくても稼げる力を身に付けたい。それが、一番大きな想いでした。フクロウラボで働いていた時、自己成長の実感やその満足度が高かったので、戻ればまた成長できると確信していました。
清水さんはフリーランスに関するアドバイスだけでなく、僕自身にとってどういう働き方がいいのかを一緒に考えてくれました。地元で力をつけるならフリーランスかなと考えていましたが、またフクロウラボに戻ることを決めました。
芯にあるのは変わらない価値観
——正直にお話いただくと、一度退職した会社に戻るのはどんな気持ちですか?
清水さんの「みんながずっとこの会社で働いてくれるとは思っていないし、機会があれば新しい会社で挑戦すればいい。ここにいる間は会社という箱を利用して踏み台にしてくれ」という言葉がずっと頭に残っていたんです。会社と働く人は対等な関係であるというスタンスが一貫して変わらないので、一度辞めた身としては戻りやすかったです。
——不安な想いもありましたか?
当時より会社も成長していて会社の中の事情が分からない不安は多少ありました。でも、転職ってチャンスでもあるけどリスクもありますよね。再入社の場合、仕事に関しては経験があるので一定の価値発揮はできるだろうという安心感があります。
一番大きいのは、社風が分かっていることかな。僕が退職した後に入社されている方が7割以上なので、戻ってきて初めてお会いする方も多かったです。けれどミッションやバリューに共感して集まっている仲間なので、価値感が合ってすぐに馴染めました。
前職では、出戻りで再入社するような人はほとんどいなかったです。なので、辞めた人の話はちょっとしづらい雰囲気。フクロウラボは、退職した人ともたまに連絡を取り合い、機会があれば遊びに来るのも当たり前なムードがある。そこから実際に再入社した方も何人もいて、出戻り組の仲間がいるのはさらに安心でしたね。
他業界を経験したからこそ、見えるようになった景色
——以前働いていた時は、どのような自己成長の実感があったのでしょう。
社会人としての在り方やお客さまとの向き合い方など、最初の2年間でビジネスパーソンとしての基礎が徹底して身についたなと感じます。前職は全く勝手の違う商社への転職でしたが、営業としてやれている感覚がありました。
また、ここで当たり前のようにやっていたことを商社に転職後も無意識に実践していたら、上長から良いフィードバックをもらったり、お客様からの評価が高いと感じる場面もありました。例えば、お客様とのミーティングで議事録をきちんと取り、認識齟齬がないようにミーティング後にお送りする。そんな、当たり前のことを当たり前にやりきることの大切さも、改めて確認できました。当たり前のレベルが高い環境に身を置くと、どんな業種・職種になっても通用する強さに繋がるんだなと。
——WEB広告のベンチャーから、老舗の商社へ。営業手法も会社の文化も、全く違いそうです。
そうですね。前職でもまた違った成長を感じましたよ。マクロな物の流れや商売に関する知識が身につき、見識が広がりました。
やや保守的な会社だったので、挑戦したいことがあってもリスクやリターンを鑑みて、承認が降りないことも多かったです。従業員からするともっとチャレンジさせてほしい、でも経営目線では多くの従業員の生活を支える必要もあって。誰も何も不満がない会社なんてあまりないでしょうが、異なるフェーズの会社を経験したことで、それぞれの判断には理由や事情があるのだなと理解できるようになりました。
——そこからまた、フクロウラボへ。
今回戻ってこないかと声をかけてもらったのは、配属先のチームがリソース不足だったこともあると聞きました。まずは今の領域でチームにコミットし、目の前のお客さまと向き合い貢献することで期待に応えたいです。以前担当していた頃は、営業活動の量が売上に直結するような成長期でした。でも今は、ある程度顧客開拓が進み戦略が必要なフェーズ。限られたリソースで筋の良い戦い方ができるように、個人だけでなくチームとして収益を拡大するような視点や、マネージャーを支えるような動きもしていきたいと思います。
——一度別の業界を経験し、戻ってきたからこそ見えるものもありそうですね。
WEB広告と全く関係のない業界の知識がついたので、少しずつ活かしていきたいなと思います。現在のプロダクトで新しい勝ち筋を探すことももちろんですが、数字に対するチーム内の考え方を刷新するとか、新しいプロダクト、新しい事業など、積極的に関わっていきたいです。
誰しも、新しいことをやっていかないと新陳代謝ができないですし、社内の雰囲気的にもマンネリ化してしまいますからね。自分が戻ってきて新しいことに取り組むことで、周りの人にも刺激になるような動き方ができたらと思います。
さいごに
——清水さんにも、佐藤さんの再入社について少しお話を聞いてみます。自分の会社に、一度は退職したメンバーが戻ってくるのはどんな気持ちですか?
清水:そりゃ嬉しいですよ。退職してからも仕事の相談に乗ったり、時々連絡を取り合ったりすることはあります。でもそれは、「話すことで少しでも力になれたら」「その人にとってもハッピーになればいいな」と思ってやっていること。また当社に戻ってきてほしいというリターンを期待する気持ちは、なくはないですが、副次的なものなので。
——佐藤さんに一言、お願いします。
清水:おかえりなさい。佐藤さんのことが好きだし、仕事ができる方なので、戻ってきてくれて嬉しいです。また一緒に働きたいと思っていました。今、佐藤さんの担当領域が事業の踊り場で苦しんでいるので、助けてあげてほしい。そして、佐藤さん自身がまたこの会社をうまく利用して、ハッピーになってほしいな。この3年で会社も成長しましたが、佐藤さんもビジネスパーソンとして変化していると思うので、これからがまた楽しみです。
(文章:紙谷 夏美)