
クリエイターのファンづくりとマネタイズを支えるOrdinaryの現在地と目指すもの
フクロウラボの期待の新規事業Ordinary。このところOrdinaryの記事が続いていることからも、その存在感が伝わるでしょうか。Ordinaryについてさらに踏み込んだお話をフクロウラボの代表でありOrdinaryの管轄役員である清水翔(しみず・しょう)さん、事業責任者の山本有樹(やまもと・ゆうき)さんに聞きました。
▼Ordinaryの事業についてはこちらをどうぞ
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TikToker、地下アイドルから芸人まで。Ordinaryを使う多様なクリエイター

──今日はOrdinaryのお話をさらに踏み込んで聞いてみたいと思います。おふたりのOrdinaryの関わり方を教えて下さい。
清:僕は新規事業創出の担当役員としてOrdinaryを管轄しています。2021年の9月までは事業責任者も兼ねていましたが、10月からは山本さんに責任者を引き継ぎ、管轄役員といちプレイヤーとして働いています。
山:僕はかっこよく言うと責任者兼プロダクトマネージャーとしてOrdinaryの企画、オペレーションの旗振り、事業企画を手掛けています。Ordinaryのプロジェクトが始まったのが2021年の3月くらいなので、まる一年前が経とうとしています。

──ありがとうございます。さっそく、Ordinaryの現在について聞いてみようと思います。現在Ordinaryを使っているクリエイターにはどんな人がいるのでしょうか?
山:以前までYouTuberをメインターゲットに想定していたのですが、最近はTikTokerの方々にアプローチしているので、利用していくれるクリエイターの層もそのように変わってきました。現在はTikTokで多くのフォロワーがいる方や、地下アイドルの方などに使ってもらっています。定めたターゲットの方に使ってもらえている実感がありますね。
清:このTikTokerへのターゲットの定め直しの結果が2,3ヶ月後に見れるので楽しみなんです。狙ったターゲットの方に使っていただけているので、手応えはいいんじゃないかなと思っています。
──現在のOrdinaryが追っているKPIはどのようなものなのでしょうか?
山:Ordinaryは、2割が人気クリエイターで、残りの8割がその他というように使っていただくクリエイターの規模がわかれるビジネスだと考えています。なので、一律のKPIではなく、トップの売上をあげる2割の人気クリエイターはOrdinary内での課金数、その他のクリエイターは受注数と、ふたつの視点で数値を追っています。
──課金数というのは、Ordinaryの中でクリエイターのファンの方が払ったお金ということでしょうか?
山:そうです。好きなクリエイターのオリジナルコンテンツをアンロックする時に支払われるお金を指しています。画像や動画など、オリジナルのコンテンツをアプリ上で見せることができるんですよ。
プロダクトマーケットフィットができた状態とは

──先ほど、狙った層のクリエイターがOrdinaryを使ってくれているというお話を聞きました。順調な滑り出しのように思えますが、現在の課題はあるのでしょうか?
清:プロダクトマーケットフィット(以下、PMF)をしきれていないところです。「これ、勝てるな!」というところまでまだ到達できていないので、しばらくはこれが課題ですね。
──PMFが実現できた状態はどのようなものだと思いますか。
山:クリエイターの状態としては、こちらから頼まなくても自発的に「このアプリでチェックしてね」と告知をしてくれる状態。Ordinaryで作った自分のオリジナルアプリに積極的に集客をしたほうが良いと認識してもらえることだと思っています。また、ファンとしてクリエイターのアプリをチェックしてくれるユーザーが増えればPMFできていると言えます。毎日アプリを開いてチェックしてくれるようになったら、できたな、という感じ。
多対多でコミュニケーションができるトーク機能をリリース
──PMFを目指す施策のひとつとして、機能追加が盛んに行われていると聞きました。最近リリースした機能について教えてください。

山:最近トーク機能をリリースしました。多数対多数でおしゃべりができるチャットのようなもので、ファン同士が話すことができます。また、クリエイターには公式バッジをもたせていて、クリエイターがトークに来るときには即時プッシュがファンに届きます。そうすると一気にやりとりが活発になり盛り上がるんですよ。
清:この機能は、TikTokでコミュニケーションをするのが難しいという声を受けて作りました。スマートフォンアプリ上でコミュニケーションができるので、クリエイターの方はより簡単にファンとやりとりすることができ、マネタイズが難しいというTikTokerの課題も解決することができます。
──今後作っていきたい機能についても教えて下さい。
山:ライブ配信機能があったらいいなと思っています。
清:僕は、ユーザーが新たなユーザーを紹介するとクーポンを発行できるような、バイラルする仕組みや機能かな。
山:いいですね。さまざまなSNSのプラットフォームがありトレンドが移り変わっていく中で、自分のウェブサイトのように戻ってくる場所、ベースとなる場所としてOrdinaryを使ってもらえるようにこれからも必要な機能を追加していく予定です。
クリエイターが楽しくOrdinaryを使ってくれるのを目指して

──これからのOrdinaryの戦略はどんなものなのでしょうか。目指すところを教えて下さい。
清:まずは、PMFでも、課金数でも「いけるな」と思える状態を目指したいと思います。それには、まず使ってくれるクリエイターが増えることが大事。有名かどうかよりも、粘着質な熱量を持っている規模の小さなクリエイターが月に30から50人ほど、Ordinaryでマネタイズできている状態が良いのではないかと思います。
──意外です。てっきり規模の大きなクリエイターからだと仰るかと思いました。
清:確かに規模の大きなクリエイターが使ってくれると規模の小さなクリエイターが続いてくれるのですが、クリエイターが楽しんでアプリを運営してくれるかに規模は関係ありません。規模が小さいクリエイターが楽しんで利用してくれるほうが、良いサービスが作れたという証明になると思うのです。
山:営業の順番も、規模が大きなクリエイターからではなく、小さなクリエイターから声をかける方法をとっています。規模が大きく有名なクリエイターにOrdinaryを使ってもらったこともあるのですが、クリエイターのパッションが続かないのです。時間はかかっても、規模の小さなクリエイターさんに少しずつ使ってもらって、楽しく運用してもらえたほうが良い状態を目指せると考えています。
──営業も、クリエイターの方へするのだと楽しそうです。大変なところはありますか?
山:受注した後のフォローも営業が担当するので、信頼のされ方で運用フォローの大変さが変わります。エンタメテックはひとつの正解があるわけではないので、クリエイターの信用を得ながらとりあえずやってみることが大切なのかなと感じています。
清:ビジネスの観点では、トップクリエイターのみに手厚いフォローをしてそうでない方はクリエイターにお任せできたら良いのですが、Ordinaryはスマートフォンアプリの制作なので、営業もエンジニアも動かなくてはなりません。あえて選んだ道ですが、今は導入、リリースまでの工数がかかります。これがどの規模でどんな運用にすると事業として成立するのかを考えていきたいと思います。
──Ordinaryのエンジニアの募集をしていると聞きました。どんな人と一緒に働きたいですか?
山:こういうビジネスモデルなので、視座を高く持って全体の動きが見える方がいいなと思います。そして何より、クリエイターの目線で開発してくれる方。クリエイターは管理画面が難しいだけでやる気をなくしてしまうこともあります。楽しくクリエイターが使い続けてくれることの肌感覚がある方が合うのではないでしょうか。
清:仕様も方向性も決まっていない生まれたてのサービスですから、新しい事業をゼロイチでやる楽しさを知っていたり、楽しめそうな人がいいのではないかと思います。
──ありがとうございます。これからのOrdinaryが楽しみですね。
山:はい。いつか若い人が「Ordinary楽しそう!有名人とすれ違えるのかな?裏側はどうなっているんだろう」とインターンに来てくれるような、そんな夢のあるサービスになるように頑張りたいと思います。
(写真・文:出川 光)
追記:2023年、Ordinaryサービスは終了し、プロダクトに参加していたメンバーは次の新規事業の創出に向けて頑張っています。